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【要注意】“国保逃れ”是正へ|個人事業主の社保加入に新判断基準

執筆者の写真: 賢二 内藤
賢二 内藤
4月5日
読了時間: 6分

1.はじめに

 2026年3月、厚生労働省は「法人の役員である個人事業主等の社会保険の取扱い」に関する通達を発出しました。

 背景には、本来は国民健康保険・国民年金の対象となる個人事業主が、形式的に法人役員となることで社会保険に加入するケースが確認されていることがあります。

 本記事では、この通達の内容を整理し、実務上の判断ポイントを解説します。


2.“国保逃れ”とは何か

 以下のようなスキームが問題視されています。

  ・ 個人事業主が法人の役員となる

  ・ 社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する

  ・ 同時に「会費」などの名目で法人へ支払いを行う

 この結果、実質的には保険料負担を抑えながら社会保険に加入する状態が生じていました。

 今回の通達は、こうしたケースに対する判断基準を明確化するものです。


3.社会保険の基本原則(役員の場合)

 まず前提として、法人の役員であっても、以下の条件を満たせば被保険者となります。


 ■判断基準(従来からの考え方)

  ① 業務の実態→ 法人の経営に参画する継続的な労務提供であるか

  ② 報酬の性質→ 業務の対価として継続的に支払われているか

 この2点を総合的に判断する仕組みです。


 ■今回の通達で明確化されたポイント

  今回の通達では、特に以下の点が明確に示されました。


 ① 会費が報酬を上回る場合は原則「非該当」

  個人事業主が

  ・ 役員報酬よりも多くの会費等を法人へ支払っている場合

  👉この場合は「業務の対価として報酬を受けているとはいえない」と判断されます。

  その結果、社会保険の被保険者資格を有しないとされる可能性が高いとされています。


 ② 実態として「使用関係」がない場合は適用外

  次のような場合も、被保険者とは認められないとされています。

  ・ 実質的に法人に使用されていない

  ・ 名目的な役員にとどまる

  👉この場合は、資格喪失の手続きが必要になる可能性があります。


 ③ 業務内容が「経営参画」でない場合

  以下のようなケースは、労務提供と認められないとされています。

  ・ 勉強会参加やアンケート回答などの自己研鑽

  ・ 意見を述べるだけの関与

  ・ 単なる情報共有や協力

  👉これらは、経営に関与する業務とは評価されないと整理されています。


4.判断の具体的な視点(実務上のチェックポイント)

 通達では、より具体的な判断材料も示されています。


 ■確認される主な要素

  ・ 指揮監督している従業員がいるか

  ・ 決裁権を持つ業務があるか

  ・ 会議への関与状況

  ・ 出勤頻度や業務の継続性

  👉これらを総合的に見て、「実態として法人に使用されているか」が判断されます。


5.実務への影響

 今回の通達により、以下の点に留意が必要です。


 ■形式ではなく実態で判断される

  単に

  ・ 役員登記がある

  ・ 報酬が設定されている

  だけでは不十分で、

  👉実際の業務内容と金銭の流れが重視されます。


 ■会費スキームは特に注意

  「報酬<会費」となる構造は、明確に否定されました。

  👉今後は制度の適用否認や資格喪失の対象となる可能性があります。


 ■適用誤りは法令違反となる可能性

  通達では、

  ・ 事実と異なる資格取得届出は法令に反する

  と明記されています。

  👉企業側にも適切な管理が求められます。


6.企業・個人事業主が確認すべきポイント

 以下の点を整理しておくことが重要です。


 ■役員の実態確認

  ・ 経営への関与があるか

  ・ 継続的な業務があるか


 ■報酬の妥当性

  ・ 業務に見合った金額か

  ・ 会費等とのバランスは適切か


 ■契約・運用の整合性

  ・ 名目と実態が一致しているか

  ・ 実質的な使用関係があるか


7.法人役員への「会費徴収」は適法なのか?

 今回の通達について、「そもそも役員から会費を徴収すること自体は問題ないのか」という点も整理しておく必要があります。


① 会費徴収が認められるケースと大原則

 まず前提として、「会費」という仕組みは、すべての法人形態に共通して認められているものではありません。

 例えば、一般社団法人などでは、会員が定款に基づいて会費を負担することが制度として認められています。

 一方で、株式会社においては構造が異なります。

  ・ 株式会社の構成員:株主(出資)

  ・ 役員:経営に参画し、報酬を受ける立場

 👉このため、株式会社には「会費制度」は本来存在しないという点が重要です。


 さらに、制度上の大原則として、

 👉「役員と会社の関係は「労務の対価として報酬を受ける関係」である」とされています。


② 会費徴収を行う場合の考え方

 上記の大原則を踏まえると、役員からの会費徴収については、以下のように整理されます。


(1)形式上は直ちに違法とは限らない

 会費という名目の支払い自体は、必ずしも一律に禁止されているものではありません。

 ただし、株式会社の制度上、役員との関係は本来「報酬」が中心となるため、例外的な取扱いとして慎重な整理が必要となります。


(2)実態により判断される(通達の考え方)

 厚生労働省の通達では、

  ・ 業務の実態(経営参画の有無)

  ・ 報酬の性質(対価としての継続性)

 を踏まえて、社会保険の適用を判断するとされています。

 そのうえで、特に重要なポイントとして、

 👉役員報酬を上回る会費を支払っている場合は、業務の対価としての報酬とは認められないと明確に示されています。


(3)実務上問題となりやすいケース

 以下のような場合は、制度上の趣旨との整合性に注意が必要です。

  ・ 報酬より会費の方が高額である

  ・ 実態として経営への関与が乏しい

  ・ 形式的な役員にとどまっている

 このような場合、

 👉「社会保険の被保険者資格が認められない可能性がある」と整理されています。


■最終結論

 👉会費徴収そのものが直ちに違法となるわけではありません。

 しかしながら、株式会社の役員に対する会費は制度上想定されたものではなく、「役員報酬を上回る会費が発生している場合」などは、実態として否認される可能性が非常に高いと考えられます。


8.最後に・・・

 今回の通達は、あくまで「社会保険の適用判断」に関するものですが、

 👉結果として「形式ではなく実態で判断する」という考え方が明確化されたもの

 といえます。


 特に、

  ・ 会費が報酬を上回るケース

  ・ 実質的な業務が伴わない役員

 については、被保険者資格が認められない可能性がある点が重要です。


 そのため、制度の利用にあたっては、名目だけでなく、実態の整合性を企業・個人双方で確認することが重要であると考えます。


■情報元

・2026.04.03 【労働新聞 ニュース】

・厚生労働省「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/content/12512000/001675920.pdf

 
 
 

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