処遇改善加算は残業代に含める?~違反の多いポイントを解説~
- 賢二 内藤
- 4月11日
- 読了時間: 5分
1.はじめに
介護事業において支給される「処遇改善加算手当」について、割増賃金(いわゆる残業代)の計算に含めていないケースが見受けられています。
2026年4月の報道では、神奈川労働局がこの点について注意喚起を強化する方針を示しました。
本記事では、処遇改善加算と割増賃金の関係について、基礎的な考え方と実務上の注意点を整理します。
2.処遇改善加算をめぐる違反の実態
神奈川労働局によると、社会福祉施設への是正勧告の中で、割増賃金に関する違反が上位に位置しているとされています。
特に目立ったのが、
👉「処遇改善加算に基づく手当を割増賃金の基礎に含めていないケース」です。
■なぜ誤りが起きているのか
違反の背景として、次のような認識になっている可能性があるとされています。
「国からの加算金で支払われているため対象外」と考えている。
→割増賃金の単価計算から除外できる「臨時に支払われた賃金」と誤解。
給与体系変更後も計算方法を見直していない。
👉これらが原因となり、誤った計算が行われている。
3.割増賃金の基礎となる賃金とは
ここで、割増賃金に関する基本となる考え方を整理します。
■基本原則
割増賃金は、以下を基に算定されます。
👉各月支給されている賃金(各種手当を含む)※÷月平均所定労働時間※変動給を含めた割増対象となる賃金の合計額
つまり、日常的・継続的に支払われる賃金は原則として算入されるという考え方です。
■除外できる賃金(法律上の整理)
労働基準法では、次に記載する賃金は算定基礎から除外できるとされています。
家族手当
通勤手当
別居手当
子女教育手当
住宅手当
臨時に支払われた賃金
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
👉ただし重要なのは、手当の名称ではなく「実態」で判断する。
という点です。
(例)家族手当や住宅手当については、
支払う対象者毎の世帯や住宅、通勤費などに関する支払状況に応じて個別に金額が決まるよう取り扱わなければ、計算から除外は出来ないとされています。
「ただこの名目で支払っているだけでは、割増賃金から除外出来ない。」ということです。
■最低賃金との違いにも注意
同じ賃金計算でも、
割増賃金
最低賃金
では、対象となる賃金の範囲が異なります。
例えば、
住宅手当 → 最低賃金では算入。
精皆勤手当 → 割増賃金では算入。
など、扱いが異なります。
👉そのため、同じ総支給額でも計算結果が変わることがあります。
4.処遇改善加算手当の取扱い
では、処遇改善加算手当はどのように扱うべきでしょうか。
■結論
👉毎月支給される処遇改善加算手当は、原則として割増賃金の基礎に含める必要があります。
■理由
処遇改善加算手当は、
毎月支給される
労働の対価として支払われる
という性質を持つため、
👉「臨時に支払われた賃金」には該当しない。
と整理されます。
■誤解しやすいポイント
① 国の財源であることは関係ない
「国からの加算金だから対象外」という考え方は、制度上の根拠とはなりません。
●名称では判断できない
「加算」「補助」といった名称でも、
👉実態が「毎月支払われる賃金」であれば算入対象となります。
●過去の計算方法のまま運用しているケース
制度導入後に給与体系が変わっても、
👉計算方法を更新していない場合、誤りが継続している可能性があります。
処遇改善加算の金額が変更になった際においても、割増賃金単価の再計算・更新が必須となります。
5.実務上の確認ポイント
処遇改善加算手当については、以下の点を確認することが重要です。
① 支給方法の確認
毎月支給されているか
一時金として支給されていないか
② 賃金性の確認
労働の対価として支払われているか
実費弁償的な性質ではないか
③ 給与計算への反映
割増賃金の基礎に含めているか
時間単価の計算に反映されているか
④ 制度変更時の見直し
加算導入・増額時に計算方法を更新しているか
就業規則や賃金規程との整合性が取れているか
6.行政の対応と今後の動き
神奈川労働局では、今後の対応として
自治体の新規開設事業者説明会への参加・周知
管内労働基準監督署による指導の徹底
などを行う方針とされています。
介護事業は今後も拡大が見込まれる分野であり、基本的な労働条件の確保とあわせて、賃金計算の適正化が求められています。
7.まとめ
処遇改善加算手当の取扱いについては、
👉「財源」ではなく「賃金の性質」で判断することが重要です。
今回ご紹介した処遇改善加算だけではなく、以下のような場合には、
👉割増賃金の基礎に含める必要がある、またはその可能性があると整理されます。
毎月支給される賃金
一律金額で支給されている手当(実費性が認められないもの)
労働の対価である
賃金計算は一見すると形式的な作業に見えますが、手当の性質や制度変更の影響を受けやすい分野でもあります。
そのため、給与体系の見直しや制度導入のタイミングで、計算方法を確認しておくことが重要です。
■情報元
・2026.04.09【労働新聞 ニュース】
・厚生労働省HP
リーフレット「割増賃金の基礎となる賃金とは?」
労働法コラム「「割増賃金の基礎となる賃金」と「最低賃金の対象となる賃金」は同じ?」

コメント