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待遇差是正は「引上げ」だけではない?判決のポイントを整理|日本郵便(住宅手当)事件

執筆者の写真: 賢二 内藤
賢二 内藤
4月20日
読了時間: 4分

1.はじめに

 有期契約労働者と無期契約労働者との間の待遇差をどのように是正すべきかは、近年の実務において重要な論点となっています。


 2024年12月12日の東京高裁判決(日本郵便・住宅手当事件)では、この点について、待遇差の解消方法は必ずしも「契約社員の待遇の引上げ」に限られないという判断が示されました。


 本記事では、本判決の事案の概要と判断のポイントを整理します。


2.事案の概要

 本件は、日本郵便の契約社員(時給制)が、正社員との待遇差について損害賠償を求めた事案です。


具体的には、

  • 住居手当

  • 病気休暇制度

  • 扶養手当

などの処遇について、


👉無期契約の正社員との間に不合理な差がある

として、労働契約法旧20条およびパートタイム・有期雇用労働法8条違反を主張しました。


 本記事では、その中でも「住宅手当」に関する部分を取り上げます。


3.会社の対応(就業規則の改定)

 本件において会社は、平成30年10月以降、

👉正社員に対する住居手当を段階的に減額し、最終的に廃止する内容の就業規則改定を行いました。

 あわせて、対象者に対しては一定期間の経過措置を実施する対応が取られています。


 なお、改定前(9月まで)の住居手当については、会社側も不合理性を争わず、既に一部和解が成立していました。


4.争点

 本件の主な争点は、以下の2点です。


■① 就業規則の改定の有効性

👉住居手当を廃止した就業規則の変更が有効か


■② 改定後の待遇差の違法性

👉改定後に住居手当が支給されないことが不合理な待遇差に当たるか


さらに原告側は、

  • 改定前の住居手当との差額を損害として請求できるか

  • 就業規則の改定が権利侵害に当たるか

についても主張しました。


5.一審の判断

 一審(東京地裁)は、

  • 就業規則変更の手続に問題はない

  • 比較対象は改定後の正社員の労働条件

としたうえで、


👉待遇差は不合理とはいえない

として、請求を棄却しました。


 これを不服として、原告が控訴しました。


6.東京高裁の判断(結論)

 東京高裁も一審判断を維持し、

👉契約社員の請求を認めませんでした。


7.判決のポイント

 本判決の重要なポイントは、次のとおりです。


■① 不合理な待遇差の解消方法は一つではない

裁判所は、

👉待遇差の解消方法は「有期労働者の待遇引上げ」に限られない

と明確に示しました。


つまり、

  • 有期社員の待遇を引き上げる

  • 正社員の待遇を見直す

👉いずれの方法も許容される

とされています。


■② 正社員側の待遇引下げも許容される

本件では、

👉正社員の住居手当を廃止することで待遇差が解消されました。


裁判所は、この方法について

👉労働契約法の趣旨を潜脱するものではないと判断しています。


■③ 就業規則変更の有効性

会社は、

  • 労働組合との協議

  • 労働協約の締結

を経て改定を行っており、

👉就業規則変更の要件に問題はないと判断されました。


■④ 改定後は「待遇差が存在しない」

改定後は、

👉正社員にも住居手当が支給されない

状態となっているため、

👉比較対象との間に差異は認められない

とされました。


■⑤ 同一待遇が自動的に成立するわけではない

裁判所は、

👉仮に不合理な待遇差があったとしても

👉直ちに同一の待遇が与えられるわけではない

としています。


■⑥ 将来の損害賠償請求は認められない

また、

👉不合理な待遇差があったとしても

👉将来にわたる損害賠償請求権が当然に発生するわけではない

と整理されています。


8.実務への示唆

 本判決から読み取れるポイントとして、以下が挙げられます。


■待遇差の是正方法の柔軟性

待遇差の解消は、

  • 引上げのみではなく

  • 見直し(引下げ)も含めて検討可能

であると整理されています。


■就業規則変更の重要性

本件では、

  • 労使協議

  • 労働協約

といった手続が重視されています。

👉適切な手続を経ることが前提となる点が示されています。


■制度設計の見直しの機会

裁判例では、

👉制度の目的やインセンティブ機能を踏まえた見直し

の必要性にも言及されています。


9.まとめ

 日本郵便(住宅手当)事件では、

  • 不合理な待遇差の解消方法

  • 就業規則変更の有効性

について重要な判断が示されました。


特に、

👉待遇差の解消は「引上げ」に限られない

という点は、実務上の判断に影響を与える内容といえます。


一方で、

  • 労使協議の実施

  • 制度変更の合理性

といった点が前提となっていることにも留意が必要です。


 本判決は、待遇差の見直しを検討する際の参考となる事例といえます。


■情報元

・2026.04.09【労働新聞 WEB】

 
 
 

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