育児・介護休業法の是正指導が急増~就業規則の「準用」ミスと雇用環境整備に注意~
1.はじめに
育児・介護休業法の改正が令和7年4月と10月に段階的に施行されてから、1年が経ちました。
この間、労働局は企業への報告徴収(就業規則や運用状況の確認)を強めており、大阪労働局では令和7年度の是正指導等の件数が前年度の5倍を超えたと報じられています。
本記事では、労働局の指摘が多いポイントを整理し、自社の就業規則・社内体制を点検する際の着眼点を解説します。
2.大阪労働局の是正指導は5倍超に
■件数の推移
報道によると、大阪労働局が令和7年度に行った育児・介護休業法の是正指導等は1,309件で、前年度の254件から大きく増えました。
このうち、育児休業・介護休業そのもの以外の項目(事業主が講じるべき措置の未実施など)が1,106件を占めています。
■背景にある報告徴収の強化
労働局は、法改正の施行を受けて報告徴収を強化しており、その結果として指導件数が伸びたとしています。
👉法改正への対応が「規程を作ったつもり」で止まっていると、報告徴収の場で不備を指摘される可能性が高まっているといえます。
3.最も多い違反は「雇用環境整備」
■雇用環境整備とは
育児休業や介護休業などの申出がしやすいよう、事業主には次のいずれか1つ以上の措置を講じることが義務付けられています。
・研修の実施
・相談窓口(相談体制)の設置
・自社の取得事例の収集・提供
・制度の利用促進に関する方針の周知
育児については令和4年4月から、介護については令和7年4月から義務化されています。
■「知らなかった」が多い
大阪労働局の指導では、育児・介護ともにこの雇用環境整備の違反が最も多く、「義務を知らなかった」という事業主が多かったとされています。
育児休業を取る従業員がまだいない会社でも、この義務は対象となります。介護についても、厚生労働省は、介護に直面した従業員がいない場合でも措置が必要との考え方を示しています。
4.見落としやすい誤り:短時間勤務の「準用」
■柔軟な働き方を実現するための措置
令和7年10月から、3歳から小学校入学前の子を育てる従業員について、事業主は次の5つから2つ以上の措置を選んで講じる必要があります。
① 始業時刻等の変更
② テレワーク等(月10日以上)
③ 保育施設の設置運営等
④ 養育両立支援休暇(年10日以上)
⑤ 短時間勤務制度(1日原則6時間とする措置を含む)
■3歳未満向けの条文をそのまま使うと違反に
栃木労働局は、⑤短時間勤務制度を選んだ企業の就業規則に誤りが多いと指摘していると報じられています。
3歳未満の子を育てる従業員向けの短時間勤務制度では、1日の所定労働時間が6時間以下の従業員を対象から外すことが法律上認められています。
一方、3歳以上を対象とする「柔軟な働き方を実現するための措置」では、所定6時間以下の従業員も対象になります。
そのため、就業規則で「3歳以上の短時間勤務は、3歳未満の短時間勤務の規定を準用する」とだけ書いていると、6時間以下のパート従業員などが制度を使えないことになり、法律の基準を下回るおそれがあります。
👉準用している場合は、「所定労働時間が6時間以下の従業員も対象とする」旨を明記するか、その従業員も選べる別の措置を設けておくことが必要です。
また、厚生労働省のQ&Aでは、もともと所定労働時間が6時間以下であることをもって「短時間勤務制度を講じた」ことにはならない、とされています。パート中心の職場でも、5つの選択肢から2つ以上を制度として整える必要があります。
5.子の看護等休暇の規定も確認を
令和7年4月からは、「子の看護休暇」が「子の看護等休暇」に改められ、次の点が変わりました。
・対象となる子:小学校入学前まで → 小学校3年生修了まで
・取得事由:病気・けが、予防接種・健康診断に加え、感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式・卒園式
・労使協定で除外できる従業員:勤続6か月未満の従業員を除外する仕組みは廃止
大阪労働局の指導でも、この休暇に関する違反は少なくなかったとされています。就業規則が改正前の内容のままになっていないか、確認が必要です。
6.会社として対応すべきこと
① 雇用環境整備の措置を1つ以上実施する
育児・介護それぞれについて、研修・相談窓口・事例提供・方針周知のいずれかを実施し、実施したことが分かる記録(周知文書、研修資料など)を残しておきます。
② 柔軟な働き方の措置の条文を見直す
3歳未満向けの規定を「準用」していないか、所定6時間以下の従業員が対象から外れていないかを確認します。
③ 個別の周知・意向確認の運用を確認する
子が3歳になる前の適切な時期(3歳の誕生日の1か月前までの1年間)に、選んだ措置の内容などを個別に知らせ、利用の意向を確認する必要があります。面談や書面など、実施の方法と記録の残し方を決めておくと安心です。
④ 子の看護等休暇の規定を更新する
対象年齢・取得事由・労使協定の除外範囲が改正後の内容になっているかを確認します。
7.まとめ
育児・介護休業法は改正項目が多く、規程を整えたつもりでも、条文の書き方ひとつで法律の基準を下回ってしまうことがあります。
労働局による報告徴収が強化されている今、指摘を受ける前に、就業規則と社内の運用をあらためて点検しておくことが重要です。
措置の選び方や規定の書き方は、会社の業種や従業員構成によって適切な形が異なります。判断に迷う場合は、専門家や労働局の雇用環境・均等部(室)にご相談ください。
本記事は2026年10月15日時点の情報に基づいています。
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■情報元
・2026.10.01【労働新聞 ニュース】育児・介護休業法 是正指導が5倍超に 法改正受け徴収強化 大阪労働局・7年度法施行状況(令和8年10月5日 第3563号)
・2026.10.08【労働新聞 ニュース】育介法・柔軟な働き方措置 就業規則改定で誤り多発 短時間勤務の選択時 栃木労働局(令和8年10月12日 第3564号)
・厚生労働省HP:育児・介護休業法について
・厚生労働省HP:育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説
・厚生労働省HP:令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A(令和7年9月24日時点)
・厚生労働省HP:育児・介護休業等に関する規則の規定例

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